【年収1000万の落とし穴】手取りが減る税金のリアルな実態と対策
年収1000万となれば、さぞかし裕福な生活ができそうです。
しかし、実際には年収1000万でも税金によって手取りは大きく減ります。
では、年収1000万の場合、税金によってどのくらい手取りが減るのか、リアルな実態をチェックしてみましょう。
合わせて、税金対策についても考えます。
せっかくの高年収を手取りに活かすためにも、しっかり対策を把握します。
Contents
年収1000万の手取りはいくら?
まず、年収1000万の手取り額を計算します。
年収1000万だと、手取り額は700万円程度。
手取りが減る原因は所得税や住民税、社会保険料です。
そのため、税金や保険料が控除によって軽減される人は、手取り額が多くなります。
具体的には、扶養している家族の数が多いと、手取り額は多めになります。
例えば、専業主婦の妻との2人暮らしで、介護保険に加入しない40歳未満の年収1000万円サラリーマンなら、手取り額は約710万円となります。
同じ条件に16歳未満の子供2人が加わると手取り額は増え、年約774万円です。
平均貯金はどのくらい?
手取り額と合わせて気になるのが平均貯金です。
年収1000万なら貯金も多くできるのでは、と考えることができます。
しかし、年収1000万だと人脈づくりなどにコストがかかることもあり得ます。
果たして年収1000万世帯の平均貯金はどのくらいなのでしょうか。
年収1000万~1200万円の層の貯金額のデータでは、1000万円以上との回答が36%を占めています。高所得層は貯金も多い、という傾向がある程度読み取れます。
一方、年収1000万~1200万円でも、貯金が300万円未満と回答した割合が20%以上あります。年収300万円未満の層などと比べるとはるかに少ない割合ではあります。
しかし、必ずしも高年収が多額の貯金につながるとは限らないのです。
家計の所得者が1人だけの場合などは貯金が難しいことも考えられます。
年収1000万の税金のすべて
日本では所得格差を縮めるべく、税制改革が進められています。
所得税も例外ではありません。
所得税における給与所得控除は、所得とともに増えます。
しかし、2013年からは給与所得控除額の上限が定められました。
当初は影響を受ける所得層が年収1500万超だったのですが、2017年以降は控除上限が220万円となり、年収1000万超の所得層が影響を受けることになります。
今後、さらに所得格差是正に向けて給与所得控除の上限が引き下げられれば、年収1000万の手取り額はさらに減ります。
年収1000万でも税金が増えれば満足のいく手取りが得られないこともあり得ます。
そこで、給与にかかる税金をしっかり把握しておきましょう。
給与にかかる税金
給与所得者に課せられる税金には、所得税、住民税、社会保険料があります。
これらのうち、年収1000万の人にとって最も支出額が多くなるのが社会保険料です。年間100万円以上にもなり、手取り額が減る原因です。ただ、厚生年金については掛金が多いほど、将来もらえる年金額が増えるというメリットはがあります。
年収1000万だと、累進税率の所得税負担も軽視できません。年100万円弱の負担となります。累進性こそないものの、住民税も課税額は所得に比例するため手取り額を減らす大きな要因です。
年収1000万の扶養103万円の壁とは
年収1000万の人が手取り額を増やす方法としては、控除を多く受ける方法があります。配偶者がいる場合は、扶養103万円の壁に注意しましょう。
配偶者控除を受けるためには、配偶者の年収が103万円以下である必要があります。103万円を超えると、「基礎控除38万円+給与所得控除65万円」で配偶者は収入を控除しきれません。
配偶者が非課税ではなく課税対象となれば、配偶者控除を利用できなくなります。
そのため、配偶者のパート労働等で家計の足しにしようとする場合は、103万円の壁に注意しましょう。配偶者控除の額は38万円です。住民税10%、年収1000万の所得税率23%と考えれば、38万円×(10%+23%)=12万5400円も税金が増えます。
住民税と所得税のほか、配偶者控除がなくなれば社会保険料にも影響します。
会社によっては配偶者手当が削減されたり消滅したりすることもありますよ。
家計収入を少しでも増やしたい、という気持ちはわかります。
しかし、年収1000万なら不要103万の壁で損をしないように気を付けてください。
年収1000万の自営業と会社員に違い
「年収1000万」と言っても、自営業と会社員では手取りが異なります。手取り額の差について確認し、理由についても知っておきましょう。
個人事業主の年収1000万とは
個人事業主は会社に所属していません。
そのため、社会保険には自分で加入する必要があります。
企業と折半する会社員と比べて負担が重くなりそうです。
ところが、実際には個人事業主の社会保険料は、会社員より少ないです。健康保険料は高いものの、年金保険料が少なくて済むからです。
というのも、自営業なら年金は国民年金となります。
会社員が支払う厚生年金保険料がない分、掛金が少ないのです。
ただし、年金の受給額も少なくなるので注意してください。
所得税や住民税については、控除が少ない分、自営業者の負担が重くなります。給与所得控除がないことが大きな差を生みます。
ただし、自営業者でも経費を多く計上できる場合は課税所得が減り、税額が少なくて済みます。
さらに、個人事業主には事業税も課せられます。税率は一般的に5%とそれほど高くありませんが、会社員にはそもそも課税されない税金です。個人事業主と会社員の手取り額の差を広げる要因と言えます。
年収1000万を超えるとさらに消費税の課税対象にもなり、負担が増します。
自営業と会社員の手取り額を比較
では、自営業と会社員の手取り額を具体的に比較してみましょう。
自営業の場合、年収1000万に対する手取り額は約669万円となります。
源泉所得税がないと手取りが多いと錯覚しがちですが、確定申告後にしっかり徴収されます。
会社員は約741万円ですから、70万円以上も差があることになります。
年金こそ50万円近く負担が少ない自営業者ですが、健康保険で約28万円、税金で約91万円も会社員より負担が重くなってしまいます。
さらに、自営業だと将来もらえる年金額が少なくなります。
将来の年金も考慮して手取り額を計算すると、より格差が大きくなります。
自営業者が年金額の少なさや退職金のなさに備えるとすれば、年収1000万の手取り額は約542万円です。
自営業の保険料が高いワケ
厚生年金がない分、自営業の年金保険料は少ないです。
しかし、健康保険料は、会社員と比べて負担が重くなります。
自営業の健康保険料が高い理由は、会社と折半できないことです。
会社員なら保険料の半額を会社が負担してくれるため、保険料が安くて済みます。
また、年金保険料も、自営業者が厚生年金並みの受給額にふさわしい貯蓄をすると仮定すれば、負担は重くなります。
やはり会社と折半できないことが負担の重さにつながっています。
年収1000万の税金対策
年収1000万でも税金や社会保険料を考えると、手取り額は1000万に届きません。
さすがに年収=手取りにはできませんが、税金対策をすれば手取り額を増やすことができます。
・会社員
まず、年収1000万の会社員ができる税金対策を考えます。
返礼品が人気の「ふるさと納税」が対策の1つです。
ふるさと納税をすれば寄付金控除を受けることができます。
実質的な自己負担2000円で返礼品をゲットできるチャンスがありますよ。
また、特定支出控除を利用する方法もあります。
勤務先の会社から証明書をもらえば、スーツ代や通勤費などを特定支出控除とすることができます。
ただし、給与所得控除額の2分の1を超えた分が控除対象である点に要注意です。
さらに、年間10万円を超える医療費を支払った場合は、医療費控除を受けられる可能性があります。保険金などで補てんされた額は控除できませんが、通院にかかった交通費なども医療費控除の対象となります。医療費負担が多かった年は活用できないか検討してみましょう。
・個人事業主
次に、個人事業主の税金対策について考えます。
個人事業主は会社員よりも控除が少ないため、節税の重要性が高いです。
まず、青色申告特別控除(65万円)を受けるようにしましょう。
青色申告届出書を提出したうえで、複式簿記のルールに従って帳簿をつける必要があります。
所轄の税務署に提出します。
ただし、会計の知識がそれほどなくても、帳簿作成ツールを利用すれば記帳が可能です。
また、年金額を増やす際には単なる貯金では損です。
付加年金や国民年金基金を利用しましょう。掛金が通常の国民年金保険料と同様に控除対象となり、節税につながります。
税金対策で手取り減を防ごう!
年収1000万と言っても、手取り額は会社員で700万円台、自営業者だと600万円台になってしまいます。税金や社会保険料によって手取り額が減ってしまうのです。
手取り額の減少を少しでも抑えたければ、税金対策が大切です。
特に自営業者は節税メリットが大きいですので、青色申告や付加年金などの制度について理解しておきましょう。
まとめ・年収1000万の会社員は手取り約741万 ・自営業者ならさらに手取りは少ない ・自営業者は保険料が全額自己負担のため手取りが減る ・会社員は寄付金控除(ふるさと納税)の活用で手取りを増やそう ・自営業者なら青色申告による節税を