【起業家への第一歩】「投資」「融資」「出資」の違いとはなにか?
お金とビジネスにまつわる単語にはさまざまな種類がありますが、その中でもよく使われるのが「投資」「融資」「出資」の3つでしょう。
それぞれお金を出してリターンを期待することであることはよく知られていますが、いったいこの違いはどこにあるのでしょうか。
ここでは一緒になってしまいがちなこの3つのワードの違いを解説します。
出資も融資も投資の一部
「投資」「出資」「融資」と3種類の言葉を並べてみると、どれもバラバラで独立した言葉があるように思えるかもしれません。
しかしこの3つのワードは、全く別物というわけではありません。言葉の意味を考えていくと、じつは「出資」も「融資」も「投資」の一部といえるためです。細かく3つの言葉が表す方法を見てみましょう。
まず投資は、対象となるものや人に対して今後の利益を見込んで、資金をつぎ込むことを指します。誰しも株式投資・不動産投資などといった言葉を一度は聞いたことがあるはずです。
また、自己投資などといった人材に対する言葉にも使うことがあります。つまり、投資という言葉自体は人材に対しても、ものに対しても使う言葉であり、特に決まったやり方があるわけではありません。
投資する期間も特に決める必要はありませんし、金額も投資者次第です。決まっているのは対象のものや人に資金を出し、そのリターンを期待するということのみです。
しかし投資をするには資金を調達したり、情報を集めたりしなければなりません。むやみやたらと投資をするのでは損をしてしまう可能性が高くなりますし、そもそも資金がなければ投資をすることはできないからです。
資金は基本的に「資本」と呼ばれる自分で用意したお金を用いるのが望ましいのですが、不動産投資などの大きな投資をする場合には、その金額を全額自分で用意することは大変難しいといえます。
そこで登場するのが、「出資」と「融資」です。出資や融資はその投資の資金調達の面において考えられた投資法の種類といえます。どちらも投資者本人ではない人物や企業が、代わりに資金を支払うことで投資をすることを目的としているからです。
ただし、出資と融資には大きな違いがあります。たとえば出資は何かしらのビジネスに投資をすることを指しますが、基本的に出資者に返済することはありません。一方で融資は、投資を希望している人にお金を貸すことであり、また返済する必要もあります。
出資も投資もいずれも投資をする際に利用する金額ではありますが、返済するか否かという大きな違いがあるというわけです。
事業の成功を期待して投資することが「出資」
まず出資からご説明していきましょう。出資は基本的に返済が義務づけられていないタイプの投資で、ビジネスやその人の成功を願って投資し、そのリターンを期待するものです。
こうした方法であることから、投資と出資は同じ意味合いで使われることもあります。株式投資では企業の成長に向けて資金を投資しますが、これはある意味企業に出資しているともいえます。
株式は必ずリターンがあるとは限らず、事業に失敗すれば株価は下がりますし、倒産してしまえば残念ながら株は紙切れ同然となってしまいます。出資は基本的に見返りを期待することはできますが、その返金を保障することはできないのです。しかし、出資した先の事業や人物が大成功を収めればハイリターンが期待できます。
出資者は一般的に起業や人物の事業計画書を見て、出資をするかどうかを判断します。出資しても良いと決まれば金額を設定し、出資契約書を記入して出資します。
出資契約書の書き方は一般的に決められていて、出資金額・使用する目的・出資率はどれくらいかなど、具体的な資金の行き先を記入します。出資する側としてもらう側は、それぞれが内容をきちんと確認したうえで捺印と署名をおこない、その時点で契約が完了します。
実際は出資してもらう側が出資者に契約書を用意し、捺印と署名をおこなってもらえば終わりなのですが、トラブルを避けるためにも出資してもらう際にはどんなことに金額を使うのか、具体的に説明できるようにしておく必要があるでしょう。
重要な点が「返済義務はないが、出資してもらっている以上は事業の報告義務がある」ということです。出資はただお金を出してくれるというものではなく、あくまでリターンを期待して投資してくれているという前提があります。
つまり、事業で利益が出た場合は配当金を渡すなど、相手にとってメリットがなければなりません。もし利益が出ていなくてリターンを渡せないことがあるとしても、現状がどうなっているかなどを報告する義務が発生します。
もちろん出資者・事業者間の契約内容にもよりますが、出資者に何も報告しないままということは失礼に当たると考えらえます。
また、融資と違うところは、出資者が経営に意見する権利があるというところです。出資者は当然利益を期待しているので、事業の成功に向けて意見を出したいと考える人も多くいます。
融資は資金の使い方は自由なのですが、返金義務があります。出資してもらった場合は返済義務がないかわりに、ある程度出資者の意見を反映しなければならない可能性が高くなります。
融資と出資はそれぞれメリット・デメリットがあり、事業内容やビジネスモデルを考えながら検討する必要があるというわけですね。
返済を前提にお金を出すことが「融資」
一方で融資はお金を返してもらうことを前提に投資することを指します。相手の投資に期待をかけてお金を貸すということです。融資してもらえる側は、簡単にいえば借金とさほど変わらないといえるのかもしれません。
しかし一定の審査を経て大きな資金を手に入れることができるため、不動産投資や事業をはじめる場合などの大きな投資を目的としている方にとっては、とても便利なシステムといえます。
また、出資してもらうときは出資者の意見も取り入れなければならないということがありますが、融資であれば資金の使い方や経営方式に口を出されることはほとんどなく、出資してもらうことに比べて自由度が高いといえます。
デメリットは、出資してもらうときとは違い、返金しなければならない点です。そのうえ、融資は利息がついてしまいますから、もともと借りた分より多く返済しなければなりません。
とはいえ、融資で借りられるお金というのは大きく、とても自分で用意できる額ではありません。それを借りて自由に投資できるため、実際にはメリットのほうが大きいといえます。
実際に融資をおこなってくれる先は、銀行や消費者金融・政府などさまざまにあります。事業などを進める場合において融資を考えているのであれば、政府が運営している日本政策金融公庫で借りるのが良いでしょう。
事業計画書を作成し、融資を受ける資格があるかどうか審査されますが、審査に通ることができれば金銭貸借契約書をとり交わすことで、大きな金額を融資してもらうことができます。また、融資は事業をはじめるときだけでなく、事業が傾いてしまって改善をはかりたいときにも利用することが可能です。
また、災害を受けたときにも利用できることがあります。事業以外では子供の教育費などでも利用できるので融資対象は多岐にわたっていることがわかります。
しかし問題は、融資を受けるにあたってそれなりの信頼が必要だということです。まだ事業をしたことがない方にとっては信用を証明するものがほとんどなく、融資を受けられない可能性も十分あります。
そんなときには、「信用保証協会」を利用するのがおすすめです。これは、中小企業でもきちんと融資を受けられるようにバックアップしてくれる協会であり、今まで実績がない人でも資金調達をうまくできるようにサポートしてくれます。
融資を受ける場合というのは、返金しなければならないというシステムから、審査を通って信頼を勝ち取らなければならないという面があります。しかし、融資をサポートしてくれるシステムは多くあるので、きちんと調査して利用することが大切です。
起業する前にはそれぞれの意味を理解しておこう
出資と融資はどちらも投資に含まれるものだが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
自分の意見を重視したいのであれば、出資ではなく融資の申請をおすすめします。ご自身の希望と目的に合った投資を選択し、明るい経済設計となるようにしましょう。
- 「出資」「融資」は「投資」の一部として使われるもの
- 「出資」は返金の義務がないもの、「融資」は返金の義務があるもの
- 「出資・投資」は出資者と投資者の意見を反映するべきだが、「融資」はその必要がない