給与が高いほど幸せを感じやすい?年収と幸福度の相関グラフ
今自分が働いて得ている年収に満足している人はどれくらいいるでしょうか。
もちろん、生活に余裕が持てるくらいの年収があれば問題はないですが、さらに上の年収を目指したいと考えている人もいるでしょう。
そして、年収が高ければ高いほど幸せになれそうなイメージを持つものです。
しかし、年収の高さと幸せを感じる度合いとは必ずしも比例しないのが現状です。
年収と幸福度との相関関係は単純な図式では表せないのです。
なぜなら、ワークライフバランスや経済学的な観点などさまざまな要素が絡んできます。
そこで今回は、年収と幸福度の相関関係について解説します。
これら2つの関係を紐解いていくと、複雑なバランス関係が見えてきます。
Contents
あなたはどのタイプ?給与別%比較
まずは、日本国内での年収分布を%で見ていきましょう。
以下のデータは、国税庁が発表した平成27年の「民間給与実態統計調査」をもとにしています。
年収500万円以内
年収500万円以内の区分は、以下のように分けられています。
・ 100万円以下
年収100万円以下の割合は8.6%で、男女別で見ると、男性が3.1%、女性が16.5%です。
男女での割合の違いに関しては、低収入の女性パートやアルバイト労働者が多いことがわかります。
・ 100万円超200万円以下
この区分の割合は15%と比較的多めの割合です。
男女別では男性が7.3%、女性が26.1%で、女性だけで見るとこの年収区分の割合が一番多くなっています。
これは、女性のパートやアルバイトの収入のほか、結婚や出産でキャリアが中断してしまうことも理由でしょう。
ちなみに、このラインはいわゆるワーキングプアのボーダーラインでもあります。
・ 200万円超300万円以下
この区分になると割合は16.3%であり、男女別では男性が12.7%、女性が21.4%となっています。
この区分では生活は何とかやっていけるものの、絶対的に見ると年収は低めということができます。
・ 300万円超400万円以下
この区分の場合、割合は17.5%と全体でも一番高く、多くの人がここに当てはまるのではないでしょうか。
男女別で見ると男性が18.3%、女性は16.3%となり、男性の割合が女性よりも高くなったのがわかります。
・ 400万円超500万円以下
この区分では割合が14.1%で、男女別では男性が17.5%、女性が9.2%となっています。
やはりこちらのラインでも男性の方がより割合が高く、男性の年収が高いことが見て取れます。
年収500万円~1000万円
では、年収500万円~1000万円を100万円ごとの区分で見ていきます。
・ 500万円超600万円以下
この区分の割合は9.7%と、400万円以上500万円以下の割合よりも大幅にダウンしています。
男女別では男性が12.9%、女性が4.9%です。
年収500万円を超えると、断然男性の割合が高くなってきます。
・ 600万円超700万円以下
この区分では、割合が5.9%となり、男女別で見ると男性が8.4%、女性が2.4%となっています。
このラインまで稼ぐことができる人はやはりあまり多くないようです。
・ 700万超800万円以下
この区分になるとさらに割合が落ち込み、4.1%となります。
男女別では男性が6%、女性が1.3%です。
男女とも割合を下げながらも一定数が存在していることがわかります。
・ 800万円超900万円以下
この区分の割合は2.8%と少数です。
男女別になると男性が4.2%、女性は0.7%です。
このラインは年収1000万円には及ばない上、税金などの優遇を受けるのが難しくなるラインでもあります。
・ 900万円超1000万円以下
多くの人が憧れる年収1000万円付近の区分の割合は1.8%で、男女別では男性が2.8%、女性が0.4%となっています。
年収1000万円以上
一般的に高収入の壁である年収1000万円を超えた区分は、500万円ごとに区切られています。
・ 1000万円超1500万円以下
この区分の割合は3.2%であり、男女別に見ると男性が5%、女性が0.4%存在しています。
・ 1500万円超2000万円以下
この区分では全体の割合がわずかに0.7%となり、男女別の場合は男性が1.1%、女性が0.2%です。
・ 2000万円超2500万円以下
この区分になると割合は0.2%となり、男女別では男性が0.3%、女性は0.1%に満たない数値です。
・ 2500万円以上
この区分の割合も0.2%であり、男女別では男性が0.4%、女性はやはり0.1%未満です。
以上のデータを見ると、全体では年収300万円超400万円以下に一番多くの人が分布しているということになります。
給与が高いからって幸福とは限らない?
上記では年収別の分布を見てきましたが、比較的分布が集中しているのが年収100~500万円のラインであるといえます。
このラインではとりあえず生活をしていけるというくらいで、年収500万円では結婚して子供1人の家族で何とかやっていけるレベルです。
そして年収は高ければ高いほど生活に余裕ができると予想されますから、幸福度もその分上がるのではと思うのもうなずけます。
しかし実際は、年収の高さと幸福度は必ずしも比例しないようです。
例えばお金にあまり余裕がない年収の場合でも、それなりの生活のやりくりをすることは可能です。
また税制上の優遇措置や各種手当の適用も受けられることが多く、それがうまくいけばある程度生活に満足感を得ることもできるでしょう。
しかし年収800~1000万円のラインは、税制上の優遇措置の対象から外れる、また各種手当の金額も減額されるところでもあるのです。
結果、年収が比較的高い割には経済的な余裕が削られ、幸福度が下がってしまうといわれています。
一番幸福なのは、年収900万円
このように年収と幸福度が必ずしも比例しないという事実を裏付ける研究を行った人がいます。
それは、アメリカのプリンストン大学に在籍するダニエル・カーネマン教授。
彼は、経済学だけでは説明しきれない人間の行動について、心理学を交えた独自の研究で行動経済学を確立させました。
その研究結果が認められ、ノーベル経済学賞も受賞しています。
このカーネマン教授の研究では、このような結果が発表されています。
人は年収75,000ドル=およそ900万円までは満足感を得られるものの、それ以上の年収を得ても満足感は比例しないとのこと。
つまり言い換えれば、人が満足感を得られる年収のピークは900万円であるということになります。
この研究結果に基づくと、年収が900万円からいくら上昇しようとも満足せず、その結果幸福度も上昇しないということになります。
これは、幸福度が年収と比例しないことを学術的に示すものというわけです。
高収入は何かを犠牲にする
年収についてその数値だけを見ていると、やはり高いに越したことはないと思いがちです。
ただし、年収の高さは一朝一夕に手に入れられるものではなく、そこにはさまざまな弊害も生まれてしまいます。
例えば、十分な年収を得ている層は管理職や責任の大きな仕事に就いていることが多いものです。
管理職は会社のトップである役員クラスと現場の従業員の間に挟まれて、なお現場をコントロールする能力が求められます。
また人の命を預かる仕事や多忙を極める仕事などでは、その重圧に押しつぶされそうになることもあるでしょう。
そのため時間や気持ちに余裕を持つことができず、満足感はなくなり幸福度は意外と低くなってしまうのです。
限界効用逓減の法則
その他、幸福度を測る論理として限界効用逓減の法則と呼ばれるものがあります。
これは、ある財を消費するとき、その消費量が増加すればするほど財がもたらす効用(限界効用)は減少していくという法則です。
例えば、ビールを飲むとき1杯目はとてもおいしいですが、2杯3杯と消費するうちに幸福度は徐々に低下していきます。
つまり、幸福度を測るとき、1杯目のビールが一番高いことになるのです。
これに年収を当てはめると、とりあえず生活できるだけのお金を受け取ると幸福度は上昇します。
しかし、手元にお金が有り余るほどになると、そのありがたみはだんだんと薄れていき、幸福に感じなくなるといえるわけです。
年収と幸福度の相関グラフ
さらに、内閣府がまとめた資料に「人々の幸福感と所得について」というものがあります。
この資料の中にある「世帯年収と幸福感」の相関グラフでは、年収200万円未満から600万円までの層では幸福度は順調に右肩上がりです。
しかしそのラインを超えてから年収1000万円までの層では、急に幸福度は停滞しているのです。
そして年収1000万円を超えるとまた幸福度は上昇しますが、それ以降は年収が高くなっても幸福度は緩やかに下降していきます。
この相関グラフでは、年収が一定ラインに達すると多くの人はほぼ満足できることがわかります。
一方で、年収が高すぎると前述のように余裕が生まれずに満足できないという現象が表されているのです。
ちなみに、年収1000万円超の時点で幸福度がいったん上昇する理由としては、1000万円の壁を超えると達成感が生まれ、幸福感が増すためと考えることもできます。
最後に
人は幸福になりたいと収入を求めますが、収入が多いから幸福とは限りません。
つまり幸福は収入だけではありません。
年収1000万円を超えても、仕事で自分の時間がなかったら、何のために働いているのかわからなくなります。
一番幸福な年収は900万円。
ただ年収関係なく、自分にとっての幸福を見つけることができたら、それが一番だと思います。
- 年収が高いことが必ずしも幸福度の高さにつながるわけではなく、むしろあまり幸福に感じなくなってしまう現象が起こり得る
- そこで仕事とプライベートのバランスをいかに取れるかが、幸福度を維持できる秘訣なのかもしれない
- 幸福の定義は人によって違うため、お金を稼ぐかプライベートの時間を大切にするか、どちらが幸福かはあなた次第