残業代なしは危険!正しい年俸制度とメリット・デメリットを徹底解剖
年俸制なのに残業代がもらえていない人。
年俸制についての基本的な情報を知りたい人。
今回はこのような状況にある人に向けて、正しい年俸制と年俸制のメリット・デメリットについて説明します。
年俸制度が注目されている現在。
日本でも、導入する会社が増えています。
今お勤めの会社も、給与体系が月給制から年俸制に変わるかもしれません。
年俸制度は身近な存在です。ぜひ参考にしてみてください。
Contents
「年俸制」とは?
年俸制とは、雇い主側が1年分の給与を提示し、従業員が合意した額を12等分して支給されるという給与形態のことです。
プロ野球選手の給料は「推定年俸〇億円」と表されるため、誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
年俸制という賃金体系が導入されていても、ボーナスは支給されることが多く、その支払い方法は大きく分けて2つあります。
1つ目は、年俸と別で支払うというケース。
成果や評価に応じた額が、月給制の会社と同じように夏と冬にわけて支給されます。
2つ目は、はじめに提示された年俸の中にあらかじめ賞与が含まれているというケースです。
このように、月給制との違いは給与額が年単位で決まることやボーナスの支払い方法くらいで、けっして特殊な契約ではないということがわかります。
年俸制が増えている
働き方改革によって、経営者と労働者の関係や就業規則、労働条件がめまぐるしく変わる現在。
年俸制を導入する会社が増えているようです。
導入企業の割合
財団法人社会経済生産性本部が上場企業を対象に実施した調査があります。
その調査によれば、2000年の時点で25.2%だった年俸制の導入率が、最近では35.1%になったことが判明しました。
年俸制はまだまだ管理職向けの制度。
ただ同調査で係長・主任クラス12.5%、一般従業員11.4%と管理職ではない中堅社員にも年俸制が導入されはじめたこともわかります。
今後も規模の大きな企業を中心に、年俸制が浸透していくことが予想されています。
成果主義は年俸制?
Tech総研が25歳〜39歳のエンジニア1000人を対象に実施した調査があります。
その調査によると年俸制のエンジニアの8割以上が、勤務先で「成果主義が導入されている」と回答しました。
成果主義と年俸制には密接な関係があるといえるでしょう。
実力主義の会社では、年齢に関係なく、仕事で結果を出した人が出世できるため、20代社員の部下が40代社員であるということも起こりうるのです。
しかし、年俸制、成果主義を導入している会社は「年功序列の給与体系が良いという人」や「仕事よりもプライベートを重視したいという人」には向かないかもしれません。
年俸制のメリット・デメリット
年俸制が導入されることで、社員側にはどのようなメリット・デメリットがもたらされるのでしょうか?
転職・就職活動中の人は、メリット・デメリットをしっかりと把握して、年俸制が自分に合っているのか慎重に吟味するべきです。
年俸制のメリット
年俸制によって得られるメリットとして、以下の2点が挙げられます。
- 急に減給されることがない
- 貯金や資産運用の計画が立てやすい
年俸制では、はじめに提示された1年単位の賃金額に合意するため、いきなり給料を減らされることはありません。
もし、会社が1年の途中で12等分された給与を減らすようなことがあれば、これは契約違反となります。
ただし、半期での更新が条件になっている会社もあるので、確認が必要です。
年俸制は、1年間の貯金計画や投資計画が立てやすいのもメリット。
もらえる給料が決まっているため、家計の収支計算の負担が大幅に減るでしょう。
年俸制のデメリット
年俸制のデメリットは、以下の2点です。
- 更新時に年俸が大幅減額される可能性がある
- 成果がすぐ反映されない
成果主義の体制をとっている会社で、自身の業績が振るわなかった場合、翌年の契約で大幅に給与が減額されるかもしれません。
生活が不安定にならないように、気をつける必要があります。
そして年俸制では、年内にどれだけ頑張っても、その成果が反映されるのは翌年です。
このタイムラグによって、働くモチベーションが持てなくなってしまう人もいるようです。
【疑問】年俸制のとき残業代はどうなる?
年俸制で「残業代は出ない」という認識を持っている人は少なくありません。
実際、年俸制を導入している会社で働く人の中には、「残業代をもらうことを諦めている」「欲しいとすら思ったことがない」という人もいるようです。
この一般的な認識は、果たして正しいのでしょうか。
法律的な見解から、年俸制と残業の関係を見ていきましょう。
法定労働時間を超えれば残業代はある
年俸制でも、労働基準法で定められた労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える場合、残業代は支給されます。
一般的に、法定労働時間を超えて働くこと『時間外労働』、残業代を『割増賃金』と呼び、時間外労働における割増賃金の支給は、給与体系にかかわらず義務付けられています。
企業側の都合で、残業代を支給しないことは許されません。
年俸制で残業代がもらえず、泣き寝入りしている場合は、改めて会社と話し合って残業代請求する必要があります。
場合によっては、裁判で雇用者と争うことも選択肢として頭に入れておくべきでしょう。
ただし、年俸に固定残業代が含まれている場合もあるため、確認が必要です。
残業代の計算方法
月の残業手当の計算式は以下のようになります。
- 1時間あたりの基礎賃金 × 1.25 × その月の残業時間
式からわかるように、割増賃金は基礎賃金の1.25倍の額。
「1時間あたりの基礎賃金」は年俸額や年間労働日数、所定労働時間から算出します。
たとえば、年俸額が480万円(1ヶ月40万円)、年間労働日数が240日、所定労働時間が7時間、残業代をXとすると、1時間あたりの基礎賃金は(40-X)/240 × 7/12となります。
240×7/12は1ヶ月あたりの平均労働時間のことです。
残業時間が20時間なら上記の式より、(40-X)/240 × 7/12 × 1.25 × 20=Xの方程式が成り立ち、Xの値は6.06。
つまり、6万60円の残業代が支払われます。
自分で残業代管理ができるようにしておくとよいでしょう。
年俸制の注意点
年俸制の注意点は、これだけではありません。
契約の更新時にトラブルが起きてしまうことが多く、注意が必要です。
どんな点に気をつけるべきかを具体的に紹介するので、参考にしてみてください。
年俸額の更新
年俸額の更新の際に「年俸額が引き下げられてしまうことがある」とデメリットの部分で紹介しましたが、その引き下げ額には限度があります。
賃金の規定があらかじめ定められており、増減についても言及されていれば、それを超える減額はできません。
規定がなくても、同等の業績の同僚と明らかな賃金格差がある。
そういった不当な扱いを受けたときは、人事権の濫用とみなすことができます。
年俸額の引き下げ
更新がないにもかかわらず、年俸額が途中で引き下げられてしまったという事例もあるようです。
このような一方的な場合、会社は契約違反を犯しているため、裁判ではほぼ確実に勝てるでしょう。
無理やり同意を迫られ、条件を飲み込んでしまっても、法的には無効になるため、心配は無用です。
しっかり制度の把握が必要
今注目されている年俸制度。しかし、年俸制の不明瞭な部分につけ込む、悪質な管理監督者がいるという現状があります。
自分の身を守るためにも、年俸制をはじめ、会社の給与システムや就業規則をしっかりと確認しておくことが大切です。
トラブルを回避できれば、年俸制にもいメリットがあるため、けっして悪くない制度だとわかるのではないでしょうか。
給料や仕事、プライベートも充実した社会人ライフを目指しましょう。
- 年俸制は、定められた1年分の給料が12等分されて支給される制度
- まだ管理職向けの制度だが、導入する企業は増えている
- 年俸制でも残業代はもらえる
- 残業代は、計算すれば簡単にわかる
- 年俸制のさまざまなトラブルに注意