【独身・夫婦で算出】老後の貯金はいくらあれば安泰なのか
老後のお金の心配は誰しもがかかえる問題です。
夫婦でも独身でも、いつか迎えることになる老後の生活ですが、それぞれ必要な金額は違ってきます。
多くの方は、公的年金や基礎年金を積み立てており、老後はそれに貯金をプラスして生活資金として暮らしていくことになるでしょう。
さらには、退職金も老後の生活費のあてにする方も多くいます。
実際にはどれぐらいお金があれば老後は暮らしていけるのか、またそれまでにどのようにしてお金を確保していけばいいのでしょうか?
Contents
お金の流れを理解しよう
老後の資金を計算する前に、まずはお金の流れを把握しておきましょう。
日々生活をしながらお金を使ってはいるものの、意外にも流れを把握しておらず、漠然と考えている方は少なくありません。
基本的に、貯金を作るベースとなるのは収入です。
ほとんどの方は仕事での収入が基本となり、それに対し生活すると生活費やローンで支出があります。
- 収入>支出=貯金
- 収入<支出=借金
このようになり、支出より収入が多ければ貯金に回すことができ、少なければ借金をすることになるでしょう。
ただしここでは、収入はそのまま資産へと直結しません。
収入から支出を引いてプラスになればはじめて資産となり、支出は負債となります。
- 資産額=負債額資本
つまりはこのような式が成り立つのです。
老後の資金を考えるならば、月々の収入をバランスシート上で管理し、できるだけ負債を減らして資本を多く持つ、定期的にキャッシュフローが得られるような資産構造にしないとなりません。
60歳以降の収入を算出しよう
ここでは60歳以降はいくらぐらいの収入があるのか計算してみましょう。
もらえる年金の額
公的年金の種類は国民年金、厚生年金、共済年金の3つです。
サラリーマンや自営業の人では、加入する年金は異なります。
国民年金の平均受給額は5万5,157円(厚生労働省年金局『平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』参照)となり、仮に40年間満額を支払っていたとしても、6万円にしかなりません。
国民年金は厚生年金とは違い、年金生活のためではなく補助的に使う目的で設立されたためこのように少ない金額になっており、年金収入のための制度とはなってはいないのです。
厚生年金の月額平均支給額は男性が16万6,6120円、女性が10万2,131円(厚生労働省年金局『平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』参照)になります。
受給は65歳からですが、60歳から前倒して受給することも可能です。その場合は月額の年金受給額は下がります。
もちろん毎月支払う金額が多いほど、受け取る金額も多くなる仕組みです。
退職金
退職金とは、会社を退職したときにまとまったお金を受け取れる制度を言います。
退職金は零細企業から中小企業、大企業から有名企業まで、さらには公務員にもあるものです。
厚生労働省が調査した平均受給額を見てみても、大卒なのか、どのような理由で退職したのかによって数字はまちまちです。
このため一概にいくらとは言えませんが、会社員の場合は以下の計算式でおよその額を求められます。
- 月給×勤続年数×給付率
給付率は自己都合退社で60%、会社都合退社で70%ほどと言われています。
たとえば月給30万円で40年間働いたとすると、以下の金額です。
- 30万円×40年×給付率70=840万円
ただ大企業だとやはり月給は多くなるので、1,000万円は越えるのは確かであり、2,000万円近くもらうこともあります。
しかし中小企業以下となると、1,000万円よりも少なくなると見ておいた方が良いでしょう。
また公務員の場合は、定年まで働くと60ヶ月分給付されますので、2,000万円は越えることが多いといわれます。
保険の満期金・払戻金
払戻金や満期のある保険ならば、老後の資金としても機能します。
なかでも注目したいのが終身保険です。
保険料を支払うとその分が積み立てられ、死亡保障にもなります。
たとえば30歳から毎月1万7,000円ほど保険料を支払い60歳に解約するとなると、およそ770万円受け取れます。
預かったお金は保険会社が運用するため、実質的な利回りが設定されていることもあり、支払った保険料よりも多く受け取ることが可能です。
60歳で120%ほど、70歳ならば130%ほど受け取れます。
投資益と利息
投資益に関しては、何に投資するかでも受け取れる金額は変わります。
また、貯金などと違って毎月利益が出るのも特徴です。
ただ投資は何をするにしても、今日始めて明日すぐに結果が出るというものでなく、5年や10年の勉強とトライアンドエラーが必要です。
また投資は損益があり、個人差が大きいです。
この項目では得られるお金の計算から外します。
継続雇用
60歳で退職しても再雇用や継続雇用という道があり、その後5年くらい雇用してもらえることもあります。
2012年に東京都が行った調査結果では定年時の5~7割程度の給与設定となるケースが多いようです。
60歳男性の平均年収が629万円(国税庁『平成25年分民間給与実態調査』)なので、半分の300万円とすると、毎年100万円貯金できれば500万円ほどの貯金ができるかもしれません。
60歳以降の支出を算出しよう
今度は、60歳以降の支出額を計算してみましょう。
家賃・住宅ローン
住宅ローンは、60歳までの完済するようにローンを組めば、60歳以降ローンの支払いはありません。
持ち家に住めば、ローン完済後は返済をしなくても良いですが、その代わりに外壁、屋根、バルコニーの修繕やシロアリ対策、給湯器交換などのメンテナンス費用が必要となり、それらを合わせると築35年で450万円が目安とされています。
賃貸の場合は、もちろん60歳以降も毎月家賃が発生します。
仮に家賃が月額6万円の賃貸住宅に住んでいるなら、年額で72万円、85歳まで25年とすると、1,800万円が必要です。
ただし賃貸住宅の場合は、壁などの修繕費用や給湯器交換費用は、すべて大家さんの負担となり、借り主の支出は必要ありません。
生活費
定年後の生活費は一般的に平均月28万円となっており、余裕ある生活をするならば35万円は考えておきましょう。
60歳から85歳までとして、月額28万円ならば8,400万円、月額35万円ならば9,000万円が必要になります。
その他
老後に出ていくこととなるお金として、医療費があります。
これは歳を重ねるほど年額は多くなる傾向にあり、65歳以上であれば年額平均72万円ほどです。
60歳から85歳まで25年間として、1,800万円かかります。
必要な貯蓄金額はいくら
ここまで収入と支出を計算しました。
85歳まで生きるとして、以下にそれぞれまとめてみます。
【収入】
- 国民年金 : 月額5万5,000円×20年間 = 1,320万円
- 厚生年金(男性) : 月額16万円×20年間 = 3,840万円
- 厚生年金(女性) : 月額10万円×20年間 = 2,400万円
- 退職金(中小企業) : 840万円
- 退職金(大企業) : 1,500万円
- 退職金(公務員) : 2,000万円
- 再雇用 : 年収300万円×5年間 = 1,500万円
- 保険解約金 : 770万円
【支出】
- 家賃(60歳から85歳) : 1,800万円
- 持ち家の修繕費 : 450万円
- 生活費(月額28万円) : 8,400万円、
- 生活費(月額35万円) : 9,000万円
- 医療費 : 1,800万円
総収入
収入と支出を考えたうえで、どれぐらい定年退職まで貯金があればいいか見てみましょう。
ここでは、会社員夫婦の場合で考えてみます。
収入 : 厚生年金3,840万円+2,400万円+退職金840万円+再雇用1,500万円+770万円 = 9,350万円
支出 : 生活費8,400万円+医療費1,800万円 = 1億200万円
これだけでも、1,150万円のお金が不足します。
ただ大企業や公務員で退職金がこれよりも多いと、それだけ不足分を補うことは可能です。
これに家賃や修繕費も合わせると、2,000万円から3,000万円は不足しますので、合計して最低でも4,000万円は必要となります。
加えて支出には冠婚葬祭や旅行なども考えられるため、1,000万円をプラスして最低でも5,000万円はあった方が安心です。
自営業だと65歳以降も働いて収入を得ることはできますが、無難に1,000万円や2,000万円は多く貯金しておいた方が良いかもしれません。
ちなみに、30歳から60歳まで3,000万円貯めるなら、年額で100万円必要であり、毎月8万円弱ほど貯めないといけなくなります。
場合によっては、投資など給料や貯金以外でお金を得る方法を考えていく必要が出てくるでしょう。
老後のプランを考えて貯蓄の見通しを立てる
全体的な傾向として、どのように頑張ったとしても定年までの収入では老後の生活費をまかなえず、それまでにある程度まとまったお金の貯金は必要です。
今回は60歳定年で85歳まで生きると仮定し計算しましたが、近年の日本は長寿化しており、90歳や100歳まで生きる方も多くなってきています。
そうなると、今回計算した以上のお金が必要となるでしょう。
そして、最近の高齢化を受けて、65歳と言わず、70歳や75歳まで働くような方も珍しくなくなってきています。
これらをふまえたうえで、必要貯蓄額のプランの立てていくことが大切です。
- ゆとりある生活を送るなら、月額35万円必要であり、25年間で600万円ほどプラスしてかかる
- 独身の場合は、厚生年金が男性(3,840万円)か女性(2,400万円)の足りない分を老後までに貯めておかないといけない
- 自営業の方などは、厚生年金の方と比べて、20年間の総支給で1,500万円から2,000万円ほど少ない