昇給なしもありえる?気になる会社員の平均昇給額を徹底リサーチ
昇給額は、労働者にとって非常に重要なポイントです。
初任給が高い会社よりも昇給額が高い会社の方が、一生涯で稼げるお金は高くなるケースが多くあります。
たとえば、初任給が10,000円低いが昇給額が1,000円高い会社があった場合。
はじめは初任給が高い会社が年収も総収入額も勝っていますが、12年目で年収が、22年目で総収入額が、昇給額が高い方が逆転します。
会社を選ぶうえで、就業規則がしっかりしている労務の場であるか、そしてどれだけ昇給が見込めるのかということは非常に重要なポイントです。
今回は日本の会社における昇給について、平均昇給額のリサーチ結果を元に徹底的に解剖します。
Contents
まず「昇給」とは?
企業に入社した際、はじめてもらえる給料「初任給」。
初任給は、一般的に求人の段階で額が決められており、規則に沿って支給されます。
そして、その後の給料が上がっていく「昇給」。
昇給は一般的に、会社の業績や人事部による個人の評価、勤続年数などによって引き上げがなされます。
昇給は、主に以下3つの方法です。
【1】定期昇給
【2】ベースアップ
【3】臨時昇給
それぞれについて説明いたします。
定期昇給
定期昇給は、昇給する基準が勤続年数や年齢など、業績以外の基準で定期的に上がっていく方式です。
日本では年功序列制度として、長らくこの方式を採用していました。
たとえば1年勤続年数が上の先輩がいた場合、1年前の先輩の給与額と同額となるのがこの方式です。
先輩と自分は常に一定の割合で給与額が増えていき、先輩の給与額を超えることはありません。
昇給のタイミングは、一般的に年度のはじめの1回か、半期ごとに2回のどちらかです。
メリット
企業としては、人件費を一定とすることができます。
企業内の年齢分布が一定の場合、毎年一定数の人員が新規入社して、一定数の人員が定年退職します。
その場合、企業が支払う人件費は年を重ねても同一です。
また、従業員は長年勤めることのメリットが大きいため離職率が減り、安定的に事業を行うことが可能となります。
従業員にとっては、先々の収入額を把握することができるため、人生設計を立てやすいという点があります。
10年後20年後の収入額を簡単に把握できるため、マイホームにどの程度割り当てられるか、将来のことを考えて生活することが可能です。
デメリット
経営者側にとっては業績をまったく上げない、能力が低い従業員にも昇給をしなければならないため、無駄な人件費を支払うことになります。
従業員の視点からも、いくら成果を上げても昇給額は一定となり、労働のモチベーションが上がりません。
高度成長期の日本では、この方式によるメリットが大きかったのですが、国内外において高い競争力を求められる現代では、デメリットの方が大きいといわれています。
多くの企業では、定期昇給でも勤続年数や年齢での昇給額を減らし、成果による昇給額を増やす傾向が強くなってきました。
ベースアップ
ベースアップは「ベア」とも呼ばれています。
ベースアップは、勤続年数や年齢に関係なく基本給の底上げ(ベースアップ)がなされる方式です。
高度成長期、ほとんどの企業が定期昇給を採用する中、多くの利益を得たとしても定期昇給では従業員に還元を行うことができませんでした。
そこで定期昇給とは別に行う昇給方法として生まれたのです。
基本的には全従業員一律で底上げがなされますが、役職や成果で昇給額を増減させている企業もあります。
現在でも多くの労働組合が、春闘として会社と交渉を行っています。
メリット
物価の上昇など、社会の情勢の変化に対応が可能です。
定期昇給の方式では、急激な社会情勢の変化による物価の上昇があった場合に対応できず、満足に生活ができないという事が起こってしまいます。
ベースアップにより全従業員の賃金水準の底上げを行うことが有効であり、従業員のモチベーション維持を行うことができます。
デメリット
ベースアップの最大のデメリットは、固定費の増大です。
とくに従業員規模の大きい会社ではその影響が大きくなります。
また一度上げた基本給は、よほどのことがないかぎり下げることができません。その後会社の業績が悪化した場合、リストラという方法を取らざるを得なくなることもあります。
従業員にとっては生涯収入が大きく増える方式ですが、その分企業にとっては慎重に行う必要があるといえるでしょう。
臨時昇給
臨時昇給は定期昇給とは異なり、必要に応じて臨時的に昇給を行う方式です。
定期昇給が年齢や勤続年数が基準になっていましたが、臨時昇給は業績に応じた昇給方式といえます。
個人が会社に対し大きく企業業績に貢献をした、会社が急成長して多くの利益が生まれた時に支払われる給与のことです。
これは「役職手当」や「昇格昇給」といった名前で支払われることもあります。
メリット
この方式は業績に連動しているため、優秀な従業員にとって正当な評価がなされているとモチベーションアップにつながります。
企業にとっても、得られた利益の中から無理のない範囲で還元ができるため、昇給によりインパクトが少なくすむのです。
デメリット
臨時昇給をやりすぎると、従業員のなかでも収入の格差が生まれ、優秀な社員とそうでない社員の間で大きな隔たりが生じてしまいます。
一般的に企業には一握りの優秀な従業員と、多数のそうではない従業員で構成されているため、結果的に全体のモチベーションが下がってしまう可能性があり、注意が必要です。
実は多い「昇給なし」
昇給というものは多くの企業が行なっており、毎年多かれ少なかれ昇給がなされると思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実は「昇給なし」という企業も数多くあるのです。
行政院主計総処が発表した「2012年の給与動向調査」によると、工業・サービス業の83.8%の企業が経常性給与(基本給や固定手当など。賞与は含まない)の昇給を行わなかったことがわかりました。
2012年は前年度に東日本大震災が発生し、企業規模の小さい中小企業に多くの打撃があった年。
2011年12月の日経平均株価の終値が8,455.35円と、近年稀に見る不況だったため、ある程度仕方のない面もありますが、企業平均83パーセントというのは驚異的な数値です。
現在も求人情報に「定期昇給なし」「業績によって定期昇給あり」、恒常的に定期昇給を行わないことが労働条件に明記されている場合もあります。
それでは、このような企業では入社当初からまったく収入が変わらないのでしょうか。
一般的に定期昇給を行なっていない企業でも、役職手当やボーナスなど別の方法で社員に還元し、成果に応じて収入が上がるようにしています。
これは優秀な社員の転職を避けるようにするためです。
しかし、昇給とは異なり業績が悪化することで簡単にカットされるため、安定的な収入を確保することがむずかしいケースは少なくありません。
そのため、昇給は安心して生活を行う上では非常に重要な要素といえます。
男性の平均昇給額
まず昇給率の計算について説明しましょう。
昇給率とは、昇給前の給与に比べてどの程度上がったかの割合を示すものです。
パーセンテージで計算され、これが大きいほど昇給がなされたといえます。
昇給率の計算式は以下の通りです。
昇給額=昇給後給与額–昇給前給与額
昇給率=昇給額÷昇給前給与額×100(%)
■給与額20万円の人が21万円に昇給した場合
21万円–20万円=1万円
1万円÷20万円×100=5%
この場合の昇給率は【5%】です。
同じ1万円の昇給でも、給与額30万円の場合は3.3%と低くなります。
平均昇給額を見る場合、この昇給率も合わせて考慮に入れる必要があるのです。
では、具体的な男性の平均昇給額について紹介しましょう。
平均昇給額の算出には、厚生労働省の賃金構造基本統計調査を利用します。
平成18年度の20~24歳の平均給与額と、平成28年度の30~34歳の平均給与額から、10年間の平均額を算出していきましょう。
大卒
平成18年度20~24歳大卒男性平均給与額:約21.8万円
平成28年度30~34歳大卒男性平均給与額:約31.8万円
ここから算出される男性大卒の平均昇給額、平均昇給率は以下のとおりです。
平均昇給額:約10万円
平均昇給率:45.8%
高卒
平成18年度20~24歳高卒男性平均給与額:約19.2万円
平成28年度30~34歳高卒男性平均給与額:約25.3万円
ここから算出される男性高卒平均昇給額、平均昇給率は以下のとおりです。
平均昇給額:約6.1万円
平均昇給率:31.7%
この結果から、男性では大卒の方が昇給額も昇給率も大きいことがいえます。
女性の平均昇給額
女性の平均昇給率についても、男性と同様平成18年度20~24歳の平均給与額と、平成28年度30~34歳の平均給与額から算出します。
大卒
平成18年度20~24歳大卒女性平均給与額:約20.5万円
平成28年度30~34歳大卒女性平均給与額:約27.6万円
ここから算出される女性大卒の平均昇給額、平均昇給率は以下のとおりです。
平均昇給額:約7.1万円
平均昇給率:34.6%
大卒女性の場合、高卒男性よりも大きいですが、大卒男性よりも少ないことがこの結果からわかります。
高卒
平成18年度20~24歳高卒女性平均給与額:約16.9万円
平成28年度30~34歳高卒女性平均給与額:約20万円
ここから算出される女性高卒の平均昇給額、平均昇給率は以下のとおりです。
平均昇給額:約3.1万円
平均昇給率:18.3%
この結果から高卒女性の場合、高卒男性、大卒女性よりも少ないことがわかりました。
男性の平均昇給額は、女性よりも大きい傾向にあります。
現在女性の待遇改善が多くの企業で求められておりますが、それでも男性の方が昇給額が大きい状態にあるのです。
昇給するためには?
それでは、昇給するためにはどのような方法をとることが有効なのでしょうか。
現在多くの企業では単純な年齢や勤続年数による昇給だけではなく、業績や個人の能力に応じた昇給制度を採用しています。
そのため、個人の能力を高めることが非常に重要となるのです。
しかし、個人の能力を会社に示すことはむずかしいものですよね。
ここでは、昇給するために必要なポイントを解説しましょう。
資格
資格の取得で昇給を行う「賃金制度」を採用している企業は少なくありません。
企業にとっては有資格者の数が増えることで、その業界での優位性をアピールすることができるため、資格取得を推奨しています。
資格の難易度によって、昇給率も変わっていくのです。
たとえば情報系の企業の場合。
情報処理推進機構が主催している情報処理技術者試験が有効ですが、ITパスポートや基本情報処理技術者よりも上位の、ネットワークスペシャリストやデータベーススペシャリストの方が高く評価され、昇給率も高くなる傾向にあります。
企業にとってなんでもできる人材よりも、1つのことに特化した専門家の方を求めているためです。
しかし重要なのは、その企業の求める資格に合致していること。
会社によって推奨される資格が異なるため、まずは確認することをおすすめします。
外国語
外国語が話せることも、昇給の基準になります。
近年は外資系ではない企業でも、海外と取引しているケースは少なくありません。
また、下請け会社として中国やベトナム、インドを活用している場合、英語でコミュニケーションを取る必要があります。
このような中、外国語が話せるということは大きな優位性があり、企業も積極的に昇給を行なっています。
もちろんその業界が求めている外国語を見極め、習得することが大切です。
ただし、ビジネスの場では英語を活用する機会が多いため、求めている外国語がわからない場合、英語の習得を行うと良いでしょう。
アピール
自分の業績や能力をアピールすることは、昇給に非常に重要な要素。
しかし、外資系や営業職のように目に見えて成果がわかる業種は良いですが、通常の業種ではなかなか自分の業績をアピールすることはむずかしいものです。
そこで重要なのが、自己の取り組みを数値化すること。
たとえば「自分が考えた作業効率化施策により、グループ全体の残業時間を◯時間削減することができた。それにより会社の人件費を◯万円削減できた。」といった業績です。
会社によっては年に1、2回上司と業績について話し合う機会があります。
そのような際には、このように客観的に判断できる数値にしてアピールすることが重要です。
資格取得の昇給が給与アップの近道!
就職する企業を決める要素として、従業者規模、初任給よりも重要なのが昇給です。
たとえ初任給が少なくても、安定して昇給する企業の方が、生涯収入は大きくなります。
以前は年齢や勤続年数により、自動的に昇給している制度を採用している企業が多くを占めていました。
しかし現在は、成果に応じた昇給を行なっている企業がほとんどです。
そんな中の昇給で有効なのが、自分自身の能力を会社に示すこと。
能力を示す方法として有効なのが、資格を取得することです。
資格を持っていることで、その分野での優位性をアピールすることが可能になります。
資格は自分の仕事内容や、会社が求めている業務内容にマッチしたものを選ぶ必要があります。
ぜひ資格取得を行い、昇給のためのアピールをしましょう。
- 昇給には定期昇給、ベースアップ、臨時昇給の3つの方式がある
- 現在は業績による昇給を採用している企業が多い
- 平均昇給額は性別、学歴によって異なり、大卒男性が高い傾向にある
- 昇給にはその企業が求める資格の取得が有効